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2008.03.21 (Fri)

映画『水になった村』

雨が降らないなどの理由でダムの水位が下がり、水底に沈んだ村の一部が、ひょっこり顔を出すことがあるという。さだまさしさんの小説「水底の村」は、主人公が幼馴染と過ごしたダム底に沈んだ村が、何十年かぶりに顔をだす、という話だった。

実際にそんなことがあるのかと思い、群馬県の草木ダムを訪問した際、ガイドを務めてくれた地元の方に聞いてみた。すると、実際にそういうことは、あるという。

そうか。さださんは、小説を書くにあたり、きちんと下調べをしたんだな、などと関心すると同時に、ダムの建設によって、長年生活してきた土地を立ち退かなければならない人がいるということに、心が痛んだ。
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先日、映画『水になった村』を、アースビジョン映画祭で観た。

舞台は岐阜県徳山村。50年前に提案されたダム建設のため、住民は1985年に村を離れたが、ダムの完成後に行われる試験湛水(しけんたんすい)(実際に貯水してみる実験)の直前まで、「村で生活をしたいと」と、一度離れた土地に戻ってきた。そんな「ジジババ」の村での生活を映画は追っている。

田畑を耕し、山菜やワサビを採るために山を登る。川に、お手製の籠をしかけて魚を捕る。野菜を塩漬けにした保存食で冬場に備える。薪で火をおこした風呂に入る…「本当に私は幸せだ」と80代のハツヨさんは言う。
そんなジジババの暮らしが淡々と描かれている。

「生きるためには80歳を超えた人もがけを駆け上っていく」(東京新聞2007年10月12日 大西監督インタビュー)という、徳山村のジジババ達。
映画では、片道4時間もかけて、ワサビを取りに行く80代の じょさんが、急な斜面をスイスイと登っていく姿に圧倒される。
「引き抜いたワサビが小さければ、土に戻すんだよ」と大西監督に教えるじょさん。ワサビが採れるこの土地も、数ヶ月後にはダムの水底に沈んでしまうというのに、じょさんは、小さなワサビを土に戻していた。

映画の終盤では、大西監督が、ババ達の移り住んだ新しい住まいを訪問するのだが、そこには、かつて溢れていた笑いも、活力もなくなってしまったババがいた。加齢のせいもあるのだろうが、それだけではないだろう。生気の抜けたババ。食料を得るために野山に入り、田畑を耕していたババは、今や、スーパーで、きれいにパックされた野菜や魚をお金で買っている。徳山村では、あの子はどこどこの娘だとか、息子だとか、家族のような人間関係があったが、立ち退きは住民にとって、こうした人間関係をも、捨てることを意味した。

あんなに生気みなぎるババはいない!と思うほど、イキイキとしていたじょさんから笑顔がなくなったのは何故か?

徳山村が水に沈み、故郷、あるいは住み慣れた生活の場を奪ったからか?

徳山村での生活を維持するには、自然と向き合って生活しなければ餓死してしまう。旬の食材を食べ、食料を求めて山に入る。都会人には面倒な暮らしも、ジジババにとっては、それが「生きる」ということだった。
住み慣れた土地を離れるということは、「生きる」という生業から彼らを引き離すことだった。そうした、「自然との共同体」と、近所の人たちと育んできた親密な関係のすべてを、ジジババは水に沈む村に置き去りするしか選択肢はなかったのである。

大西監督は、映画上映後のトークでこう言った。
「エネルギーを求めてきた我々。一つの村をつぶしてまで必要とするエネルギーとは、一体何だろう。私たちの暮らしと、じょさんの暮らしを比べてみると、私たちの暮らしは一線を越えてしまっていると思う」と。

徳山ダムは当初は発電のために、後に、多目的ダムとして建設が進められた。
ダムの恩恵を受けるのは、そこに住んでいた住民ではない。
エネルギーを必要とする都会人である。
つつましい暮らしをしていたジジババ達から、生気を奪ったのは私たちである。

今後、水に沈む地域が100か所以上あると大西監督は言う。
「ダムは都会から見えない山奥に造られる。見えないところでエネルギーを作っているという意識をもつだけでも随分違う」(同東京新聞)

映画を通じて、そこにある人々の暮らしから、ダムや原発などの開発が、どんな影響をあたえているのか、考えてもらえると嬉しいと語った。

・・・・・
アースビジョン映画祭で、「水になった村」は、最優秀賞を受賞しました!
・・・・・

『水になった村』公式ホームページ
上映情報もこちらのホームページで。
3月23日には京都と長野で、上映会があるようです。






4つの短編小説のうちの一つが「水底の村」です。どの作品も素晴らしいです!
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